かわいそう?
私の母は今年で80代半ばである。
年老いた母はやはり体も色々思うようにならなくなってきており、入院したり退院したりを繰り返す。
母が今年明けてすぐに入院した時(コロナ前の話で今は自宅で過ごしている)お見舞いに何日もいくと話題が音楽の話になる。
母は音大をでたわけでもないのだが、ピアノの先生をしていた。
今から考えると何故先生をしていたのか疑問がある。
そんな母が最近、いや、実は結構前からトロンボーンなんてかわいそうに。と発言する。
一般的に多い意見だが、いわゆる花形の楽器をやることが好ましいのだ。
ピアノ、バイオリン、フルートなど。
母は人当たりは良いがとても偏見が強く、テレビにでている歌手という人たちを全てヘタクソと言っており、子供だった私は母が正しいと思いテレビにでている歌は聞かなかった。
いわゆる歌謡曲は聞いてはいけないのだと思っていた。
良いと思うものしか受け入れなかった母は人生を損しているのではないかと思う。
トロンボーンは確かに派手さはない。
休みも多いし裏打ちしかなかったり、吹いてる本人もつまらないと思う場面はある。
しかし、オーケストラの中で実際演奏側にまわると全ての楽器が素晴らしい!
ファゴットの穏やかな音、コントラバスのカッコいいピチカート、ティンパニあってこその盛り上がり。
知らないのだから仕方ない。
ただ、音楽に関しての理解者と思っていた母にトロンボーンをやることがかわいそうと思われるのは悲しい限り。
息を吹けば鳴る楽器、簡単な楽器、楽器で一番素晴らしいのはピアノだと。
ピアノ、私も大好きだ。
でもピアノが全てではない。
多分このままトロンボーンを理解されることはないだろう。
トロンボーンの神と言われるアレッシが切なく遠くから聞こえてくるかのようなコラールを演奏している。その裏で高鳴る弦。泣きそうになる。
マーラーの2番5楽章。
トロンボーン吹きなら誰しも憧れる曲だ。